犬には人の心を無防備にする力がある。モーイを飼い始めて10ヶ月を過ぎようとしているが、この頃確かにそう思う。
世界の捉え方、自身の思考は流動的に変わっていくが、年齢を重ねるにつれて客観性を失わず、冷静に物事を判断する方向に向かっている。それは、単純に世界を知りたいということもある。が、自分の社会的位置を理解し、社会でどう生きていけば傷付かないか、という潜在的意識も大きく影響していると考える。
そうやって生きていると、感情を表立って出すことを独りでいる時すらしなくなっていたのである。
【ハイタッチをすればみんなハッピー】
ところが、精神的にかなりのダメージを受けて底に落ちていたある日、冷静ではいられないことが起きる。いつも通りモーイが私の膝の上に乗り尻尾を振って見つめてきた時、突然、涙が流れたのである。それも、ダムが決壊したように一気に。年甲斐もない涙をモーイはペロペロ舐めて水分補給。そんな姿を見てダムおじさんは笑ったのである。
【癒しのキョトン顔】
散歩をしていてもそれを感じる。厳つい顔と服装をした大柄な紳士が、自分の愛犬に微笑みながら裏声にも近い甘声で話かけているのである。ああ、この人も犬の力にやられてしまって全く持って無防備だ、と勝手に仲間意識を感じてしまうのである。
【ほっぺが結構伸びまっせ】
そうやって気づかずうちに犬の力にやられていた自分は、モーイと暮らす以前よりもずっと無防備になり、そんな無防備な自分を発見できたのである。ああ、脆いなぁ、でも大丈夫。そう思えるようになった。それは、脆さに近い感情の柔らかさがまだ心にあったからだ。大事に思う存在を、文字通り大事にしていきたい。子どもの頃に抱いてたであろう純粋な気持ちを、また持てるようになったのである。
これぞ犬の力!そう信じてやまない。